ビームフォーミングとは?ビームフォーミングの原理、効果と利用の際のデメリッ
Wifi機器を眺めていると、最近目にする事も増えてきたビームフォーミングという機能。実は、最近普及してきた便利な機能なんです。今回はビームフォーミングを利用した場合の効果や原理、注意点までを元ネット回線の技術畑にいた私が解説していきます。
ビームフォーミングとは?
Wifiに搭載されている機能の事で、今までより干渉が起きにくく、より安定した電波を、高速で遠い距離まで届かせる事のできる仕組みです。一般家庭のネット利用でストレスになりやすい、「遠い部屋まで電波が届かない」や、「動画が時々重くなる」といった現象を解決できる場合もある、便利なシステムです。
今までのWifiは360度に対して、比較的均一に電波を発信する仕組みでした。自分のものではないWifi電波が多く入るのもその為で、その分干渉が起きたり、利用環境によって大きく速度が左右される事がありました。
ビームフォーミングの場合は、発信側の端末が、受信するスマホやPC等の位置を限定して、最適な電波を発信する事ができます。その為、干渉も少なくなり、より安定した電波を遠くまで飛ばす事ができると言う訳です。
では、ビームフォーミングの具体的な効果には、どういったものがあるのでしょうか?
ビームフォーミングの効果
利用環境やWifi機器の特性にもよりますが、一般的なビームフォーミングの効果としては、従来より通信速度が約1.2〜1.5倍伸び、電波が届く範囲も3割〜4割程度、遠くまで届くと言われています。
ですから、一般的な利用例としては、「2階でタブレット使いたいけど電波が弱い!」の様な問題が解決できたり、「家の様々な場所でネット利用したい!」の様な願いが叶ったりする効果が期待できます。電波強度も高くなるので、ネットゲーム利用や集中して動画を見たい方にも、最適の機能と言えるかもしれません。
では次に、ビームフォーミングの仕組みをご紹介します。難しくならない様、なるべく分かり易く解説しますね。
ビームフォーミングの原理を解説
原理をシンプルに解説すると、ホースを絞って放水すると、強く・遠くに水が届くと思いますが、仕組みとしてはほぼ同じです。通常だと均一に発信される電波を、ポイントを絞って集中して出す為、より強く・遠く・速い通信が可能になると言う訳です。
もう少し詳しく解説しますと、ビームフォーミング対応の機器は、複数のアンテナから発信した電波によって、受信するスマホやタブレット等の位置を把握します。その後、スマホやタブレットを目標として、電波の強い部分と弱い部分を設定します。
弱い部分は電波同士をぶつけて、打ち消し合って電波を弱くし、強い部分には電波の特性を利用して、干渉させて電波を強く安定したものにします。ビームフォーミングという名称から、ビビビっとビームが出ている印象がありますが、実際はもう少し幅広く、電波の通り道が作られると言うイメージです。
ビームフォーミングで速度低下がかなり防げる
従来は四方八方に発信されていた電波を、ターゲットに向けて無駄なく発信できるので、安定した通信が実現できる仕組みとなっているのがビームフォーミング。だからと言って、他の端末を接続することができない訳ではないので、ご安心ください。対象の端末近くでなくても、別端末も安定して利用することができます。
従来の電波は、複数台の端末を繋いだ場合は、その端末ごとに360度の電波を発信する仕組みでした。
それぞれに電波を発信する必要があるので、速度低下を招く場合も多かったはずですが、ビームフォーミングの場合は、ターゲット端末に対して最低限の電波の通り道を作るので、複数台接続の場合も速度低下が少なく、無駄なく安定した利用ができるのです。
実はこの機能は、今後導入が予定されているスマートフォンの5Gにも利用される予定でもあるんです。良い事ずくめの機能ですが、使う為には一体どうすればよいのでしょうか?使う為の端末も含めてご紹介致します。
ビームフォーミングを使うには?
・対応Wifiを利用する
ビームフォーミング機能を利用する場合は、Wifiなどの端末と、スマホ・タブレット等の受信端末が両方対応している事が条件になります。まずは、対応しているWifi機器から見ていきましょう。
メーカー | Wifi機器名 |
---|---|
Buffalo | WI-US433-DHP、WI-US433-DMS、WI-US433DM、WXR2533DH2、WSR1166DHP3、WTR-M2133HP、WCR1166DS、WSR1166DHP4、WHR1166DHP4、WHR1166DHP3、WSR-2533DHP、WXR-1751DHP2 |
<ビームフォーミングEX対応> | WXR-1750DHP、WXR-1751DHP2、WXR-1750DHP2、WXR-1901DHP3、WXR-1900DHP3、WXR-1900DHP2 |
エレコム | WRC-1750GST2 WRC-1750GSV WRC-1900GST WRC-1900GST2 WRC-2533GHBK2-T WRC-2533GHBK-I WRC-2533GST WRC-2533GST2 WRC-1167GHBK-S WRC-1167GHBK2-S WRC-1167GEBK-S WRC-1167FS-B WRC-1167FS-W |
IOデータ | WN-AX1167GR2 WN-DX1167R WN-AX2033GR WN-AX1167GR2/E WN-AX2033GR2 WN-AX2033GR2/E |
この機器の一覧は、特定メーカーの一部の機器ですが、802.11ac規格等の比較的新しい機種であれば、ほとんどの機種でビームフォーミングは採用されています。Wifi機器には様々な機能も搭載されていますので、必要な帯域やセキュリティー機能を含めて検討すると良いでしょう。
また、利用する為の設定に関しては、基本的にはON/OFF切り替えできる機器も多いですが、通常出荷時にONになっている場合が多いので、そのまま利用することが可能です。機器によって設定が違う場合もありますので、利用前に確認しておくと安心です。
ビームフォーミングEX・Zの特徴
ビームフォーミングには、グレードアップした機能を搭載するものもいくつかでてきました。
代表的なものは、BuffaloのビームフォーミングEXや、エレコムのビームフォーミングZです。より強く、干渉を受けにくい電波を発信できる事で、速度も1.5倍程度速くなり、障害物に影響を受けにくい通信が可能です。
この後ご説明しますが、ビームフォーミング利用の為には、スマホやタブレットも対応端末を使用する必要がありますが、EXやZなどのWifiの場合は、非対応端末でも利用できる特性があります。もちろん購入前には、事前確認の必要もありますが、比較的利用しやすいグレードアップ機能と言えます。
対応端末で電波を受ける
ビームフォーミング利用の場合は、スマホやタブレットが対応しているか確認する必要があります。iPhoneなら6以降のモデル、androidや格安スマホも対応機器であれば利用できます。購入される際は、機器ごとに対応しているかの確認をしておくと安心です。
また対応していない端末でも、先程ご紹介したビームフォーミングEXやZなら利用できる場合があります。例えばiPhone5端末は通常非対応ですが、ビームフォーミングEXやZなら利用する事ができる様です。
最後に便利なビームフォーミング機能を利用する際の、注意点やデメリットも確認しておきましょう。最近ネットの速度低下が見られる方にとって、通信障害の原因になっているかもしれない内容が含まれています。
ビームフォーミング利用の際のデメリットと注意点
ビームフォーミングのデメリットとしてあげられるのは、3点でしょうか。
対応端末が限定される
一般的に自宅には、スマホやタブレットを含め、複数台所有している場合も多いはずです。この場合に、A端末では繋がるが、B端末は非対応の為繋がらない。なんてケースもあり得ます。
また、ノートパソコン等を同時利用される場合も、対応PCを利用する必要があります。折角購入したのに利用できない端末があれば、本当にもったいない買い物です。購入の前には、全ての端末が購入するWifiに対応しているかどうか、確認しておくと良いでしょう。
建物の構造や材質で効果に差が出る
建物の構造や材質によっては、通信の状態が改善しない場合があります。
ビームフォーミングの場合は、安定した強い電波を送る事ができますが、電波の特性上どうにもならない場合もあります。建材や構造が原因の速度低下であれば、購入前に改善できるものか情報を集めた方がいいかもしれません。
従来のwifi電波を拾いづらくなることも・・
3点目は、ビームフォーミング機能を搭載したWifiが増えた事で、従来のWifi電波に繋がりにくくなる事象もある様です。
ビームフォーミング電波は従来よりも強固な電波ですので、近隣の住宅やのWifi電波を妨げたり、従来のWifiとの併用を考えられている場合は、従来の電波が掴みにくくなったりする場合もある様です。
個人での対策はほとんどできない上、普及段階の弊害ですのでどうしようもないですが、知識として覚えておくと良いでしょう。
筆者の目 ビームフォーミングの評価
ビームフォーミング機能は対応機種を利用する等、注意する点もありますが、快適にネット利用する方法として、とても便利な機能だと分かりました。Wifi機器から距離が離れていて、電波が弱いユーザーや、家族同時利用で速度が落ちる家庭も、ネットストレスを解消できる方法になるかもしれません。
是非、購入される前には、今回の内容を参考にして頂いて、利用端末の確認やシュミレーションも行ってみて下さいね。機能やデメリットをしっかりと理解した上で、快適なネット利用にお役立て下さい。