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光回線の規格 G-PONとGE-PONの違いを徹底解説

 

光回線の伝送規格にはG-PONとGE-PONの2つがあるのをご存じでしょうか。名前はとてもよく似ていますが、回線各社がどちらを採用しているかによって通信速度がまるで変わります。この記事では、G-PONとGE-PONの違いについてご説明します。

 

 

光回線の伝送規格「PON」とは?

 

G-PONやGE-PONについて理解するには、まず回線の伝送規格である「PON」について理解する必要があます。そのためには、光回線がどのような仕組みになっているかを知っておかなければなりません。

 

光回線の仕組みには2種類ある

 

私たちが使っているインターネットは、光回線の基地局から回線を各建物に引き込むことで利用することができます。この光回線の引き込み方には「シングルスター方式」と「パッシブダブルスター方式(シェアードアクセス方式)」の2つがあります。

 

シングルスター方式は、基地局からそのまま建物に引き込むことで光ファイバーを独占する方式です。

 

一方、パッシブダブルスター方式は電柱にある中継地点(光スプリッタ)で回線を分岐させ、各建物に引き込む形を取ります。つまり、1本の光ファイバーを複数のユーザーで共有する形となります。この、パッシブルスター方式が、別名で「PON(Passive Optical Network)」とも呼ばれる規格なのです。

 

<PON(パッシブルスター方式)のイメージ>

PONのイメージ

画像は、https://app.journal.ieice.org/trial/100_8/k100_8_777/index.htmlより引用

 

2つの引き込み方式のメリット・デメリット

 

シングルスター方式では、1本の光ファイバーを引き込む建物で独占できます。いわば、1つの車線を1台の自動車で独占しているようなもの。走行(情報の送受信)を邪魔するものは何もないので、本来の通信速度でスムーズに通信ができるのです。

 

一方、パッシブダブルスター方式は、複数のユーザーで回線を共有する形です。したがって、同時に利用しているユーザーが多いと回線が混雑して通信速度が低下します。

 

これだけを聞くと、シングルスター方式の方が良いかもしれませんが、光ファイバーを独占するため費用が極めて高くなります。この点から、シングルスター方式を使用しているのは企業や団体がほとんどです。一般家庭向けの回線はすべてパッシブダブルスター方式が採用されています。

 

GE-PON とG-PONの違いは?

 

1本の光ファイバーを分岐させて複数の建物に引き込むパッシブダブルスター方式、別名「PON」にはさまざまな規格があります。その中でも主に採用されている規格が「GE-PON」と「G-PON」の2つです。主な違いは次のとおりです。

 

  G-PON GE-PON
最大通信速度 約2.5Gbps 約1.25Gbps
フレーム GTC イーサネット
主な採用回線 NURO光 フレッツ光
導入コスト 高い 安い

 

日本でメジャーなGE-PON

 

GE-PON(Gigabit Ethernet-Passive Optical Network)は、日本の光回線サービスの大半で採用されている伝送規格です。

 

GE-PONが多くの業者で支持されている理由は、家庭で使われているLAN規格「イーサネット」のフレームをそのまま使用するため、システムが比較的シンプルになる点にあります。GE-PONの場合、実現可能な通信速度は最大1.25GBpsです。多くの光回線で「最大通信速度1Gbps!」と掲げているのは、この数値に由来しています。

 

GE-PONを採用しているサービスは?

 

GE-PONの採用業者で最も有名なのは、最大手のフレッツ光でしょう。また、フレッツ光の回線を使用しているサービスを提供しているソフトバンク光やドコモ光などの「光コラボ」も当然GE-PONとなります。

 

高速通信が可能なG-PON

 

G-PON(Gigabit Passive Optical Network)は、国際電気通信連合で標準化されている伝送規格です。

 

GE-PONがイーサネットベースのフレームを用いているのに対し、G-PONの場合はGTCフレームと呼ばれる独自のフレームを採用しています。このフレームにはイーサネットだけでなく非同期転送モード(ATM)など複数のフレームを混載することができ、最大通信速度はGE-PONの2倍となる2.5Gbpsを実現しています。

 

ただし、GE-PONよりもシステムが複雑で設備の導入コストも高くなるため、採用している業者はそれほど多くありません。

 

G-PONを採用している回線は?

 

最大通信速度を1Gbpsではなく2Gbpsとしている光回線サービスはG-PONを採用している可能性が高いです。代表的なサービスとしては「NURO光」やNURO光の回線を流用している「Swift光」、名古屋市を中心にサービスを提供している「スターキャット光」などが挙げられます。

 

伝送規格だけではないG-PONが高速な理由

 

最大通信速度で考えれば、GE-PONの1.25Gbpsでも不足はありません。数値だけを見れば、むしろオーバースペックです。しかし、実際にはフレッツ光をはじめとしたGE-PONの回線でも遅いという声がちらほら聞かれます。その理由はユーザーの多さにあります。

 

GE-PONは1本の光回線を32世帯で共有する

 

ギガ単位の通信速度を誇るGE-PONでも実測値が遅くなるのは、1本の光回線(光ファイバー)を共有するため、通信速度が分散されるためです。

 

具体的な数字を挙げてみましょう。1本の光回線、まず回線業者の局内で4つに分岐されます。そして、電柱にある光スプリッタでさらに8分岐されて各家庭に引き込まれることになります。

 

つまり、最大で4×8=32の家庭で1本の光ファイバーを共有することになるのです。GE-PONの最大通信速度は、1.25Gpbs(1250Mbps)ですので、単純計算で1世帯あたりの最大通信速度は約39Mbpsまで下がることになるのです。各家庭の通信設備によっては、この数値はさらに下がります。

 

また、GE-PONを採用しているフレッツ光は加入数が非常に多く、この32分岐がすべて埋まる可能性が高くなります。したがって、多数のユーザーが同時接続する確率が高くなるため、通信速度が低下する時間も多くなるのです。

 

マイナーなG-PONは回線を占有できる可能性が高い

 

1本の光回線を32分岐させるのは、実はNURO光をはじめとするG-PON採用の光業者でも変わりません。

 

ただし、利用ユーザーが少ないという点がアドバンテージになります。ご説明したとおり、回線は局内で4分岐した後、電柱で8分岐されます。しかし、利用者の少ないG-PONでは、電柱から引き込める範囲で8世帯がフルに加入する可能性が低いのです。

 

したがって、各家庭に割り振られる通信帯域も大きくなり、GE-PONよりも通信速度が安定しやすくなるのです。

 

もちろん、これはあくまで傾向であり、場合によっては周りの家庭がNURO光ばかりだという環境もあり得ます。また、G-PONがメジャーになり加入者が多くなれば、このメリットは薄まるでしょう。

 

しかし、そもそもGE-PONはG-PONの倍の通信速度を実現しています。したがって、ユーザーが多くなってもGE-PONより高水準の通信速度を保つことができると考えられるのです。

 

G-PONの特徴

 

G-PONは、GE-PONよりも技術的に高速通信が見込めるうえ加入者も少ないことから、非常に安定しているのが特徴です。「メジャーでないサービスの方がむしろ快適」という点がネット回線のユニークなところです。「皆が加入しているから」という理由で回線を決めるとかえって損をするかもしれませんね。

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